インタビューへの苦手意識を克服する方法

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「シバタさん、“Editors’&Writers’ Advent Calendar”てゆーの作ったんで何か書きませんか?」--

前職で大変お世話になったS村さんから、こんなFBのメッセージが来たのは、晩秋と冬の境目のころでした。

(…アドベント? 何それ? 龍騎??)

恥ずかしながら「アドベントカレンダー」という風習(?)について知ったのは、今回のお誘いを受けたのがきっかけです。

…なるほど。みんなが楽しみなクリスマス当日がやってくるのを、12月に入ってから、カレンダー上で1日ずつカウントダウンしていくんですね。なんというリア充イベントでありましょう。クリスマスどころか、誕生日やら、忘年会やら、夏休みやらといった季節のイベントに徹底的に無頓着で、あまつさえ曜日や一日のリズムさえも失って久しい僕が、こんなリア充イベントに参加する機会を得られるなんて、この先、死ぬまでもう二度とないかもしれません。喜んで参加させていただきます。

…とはいえ、アレなんですよね。ここ数年、ゆるいテーマで自由に文章書く機会がほとんどなかったんで「何か書いて」って言われても、何書けばいいか、とんと思い浮かびません。困りました。

「S村さん、僕が書くとしたら、どんなの読みたいですか?」

「そーですねー。人に話を聞くときのコツみたいなのどうでしょう」

…それを僕に聞きますか。いや、こんなこと言っちゃっていいのか分かりませんが、正直、僕、あんまり人と話するの得意じゃないんですよ。初対面の相手だと、雑談が10分もたないことなんてザラです。

ただ、たしかに20年近く、この仕事(編集、ライティング)をやってきた中で、初対面の相手と、決められた時間で、それなりに「得るものがある」会話をするためにはどうすればいいかというのは、考えてきたような気もします。うまく着地できるか分かりませんが、いい機会なので、それをエントリにしてみましょうか。

そんなわけで、ここからの文章は、「インタビューや対面取材が苦手」という若手の編集記者さんやライターさんが読むことを想定して書きます。「俺、そういうの得意だし」って思ってる方が読んでも、得るものは少ないかもしれません。

あくまでも、「苦手なりに、それなりの数のインタビューや取材をこなす必要があるんだけれど、取材前日には緊張して頭やお腹が痛くなったり、息が上がって寝付けないこともあるんです。助けて! カミタマン!」という感じの人が、少しでも落ち着いた気分で現場に臨めるようになるための一助になればと思います。

まず「調べる」

だいたい、本番を前にした過度の緊張というのは「準備不足」が引き金になっているケースが多いんですね。なので、対面取材、インタビューの前には、「調べる」ことと「考える」ことを十分にやっておけばいいんじゃないでしょうか。

取材のきっかけは、自分で「この人に話を聞きたい!」と思って、それが実現するケースもあれば、「誰々に話を聞いてください」と頼まれるケースもあると思います。まぁ、職業ライターだと、後者が多いですよね。それが、自分のまったく知らない人だったりすることもままあります。

話を聞く相手がわかったら、まずは相手について、時間があるときにでも軽く調べてみましょう。これ、昔だと、いろいろ手間がかかったんですが、今はインターネットがあるので、その人の名前や所属組織名でググれば一発です。見ておく要素としては、

  • 所属組織、そこでの立場
  • 生年月日、年齢
  • 出身地
  • これまでの実績、経歴
  • メディア、ネットでの発言
  • 所属組織の最近の活動

あたりは、大抵すぐ出てくるはずです。実名でSNSやってる人なら、

  • 趣味
  • 家族構成
  • 居住地
  • 最近の休暇にどこ行ったか
  • 昨夜の晩飯

まで分かることもあります。コワい世の中ですね。

この段階で調べたことは、年数や数値に関することはメモっておき、そのほかのことは頭の片隅に入れておく程度でいいです。大切なのは、情報から「会うことになるのは、どんな相手なのか」のイメージを作っておくことです。

もちろん「実際に会ったら全然イメージ違った!」ということも多いのですが、自分なりにある程度のイメージを事前に作っておくと、不意打ちで慌てることも少なくなります。初対面の相手と関係を作るのが苦手な人ほど、事前のイメトレが効いてきます。

さて、「調べておく」ことが必要な別の要素として、相手が「特定の分野の権威」である場合に、その分野の事前知識をどの程度仕入れておくかというのがあります。

これについては、最終的な成果物を「誰に読んでもらって、どのくらいまで理解してほしいのか」について、程度が変わってきます。自分(聞き手)の立ち位置としては「平均的な読み手よりもちょっと詳しい」くらいが、一番やりやすいような気がします。そのくらいの知識を持っていながら、実際に話を聞くときには「読者と同じ立場」で聞けるように事前に根回しをしておくと、最終的な成果物がいいところに落ち着く感じです。もちろん、相手が書いた本や論文があれば、代表的なものを1つ2つ事前に読んでおくべきでしょう。

このあたり、相手が「話慣れしているかどうか」や、担当者間での事前の根回しの巧拙によっても、現場での立ち回りが変わってきますので、結構高度になってきます。にわかでも、可能な限りの知識を仕入れておき、それをベースに会話が進められる程度にはしておくのがいいんじゃないでしょうか。

あともうひとつ。まれに、ググっても相手に関する情報がほとんど手に入らないというケースがあります。そうした事態を避けるためにも、取材の話が振られた段階で「どうしてその人に話を聞くのか」「相手はどういう人か」について、依頼者に確かめる習慣を付けておきましょう。…あ、今、「そんなことあるか! フツーは、依頼時にそういう情報はもらえるもんだろ!」と思いました? 必ずしもそうとは限らないのが、この仕事の恐ろしいところなんですよ。フフ…。

次に「手札」の作り方を「考える」

さて、ある程度調べたら、次は「考える」フェーズです。ここでは、実際の現場で会話のネタにするための「材料」を作ります。つまり、具体的な「質問項目」作りですね。

取材時間が1時間程度の場合、僕だと大体「5つ」の質問項目を事前に考えておきます。この5つの質問に、後で説明する「ワイルドカード」を足した「6枚の手札」を、自分のデッキとして現場に持ち込みます。お。なんか、カードゲームっぽくなってきましたね。じゃ、ここからは各質問項目を「カード」として説明していきます。

カードを作るにあたって、考えるべきことはシンプルです。つまり「何が聞きたいか」です。今まで集めた情報や知識から、まずは、思いつくままに質問項目を書き出して見ます。

思いつくだけの質問項目を書き出したら、内容の吟味に移ります。

まず、「似たような質問」「同じ質問としてまとめられる関連性の高い項目」があれば、最初にまとめておきます。ある程度まとめ終えたら、次は「複数の視点」で質問項目を見直し、どの視点での「質問」になっているかを検討してみます。ここでの「視点」は、

  • 読者視点
  • クライアント(仕事の依頼主)視点
  • 自分視点

くらいを想定します。「読者視点」は、非常に優先度が高い視点で、最終的な成果物を見てくれる人たちが「聞いてみたい」と思う質問かどうかということです。たいていの場合、聞き手は「読者」の立場で質問を考えると思いますが、想定読者と聞き手である自分のプロフィール(年齢とか、性別とか、趣味嗜好とか、前提知識とか)に差がある場合、このあたりを意識しないと、ズレが大きくなる傾向があります。

「クライアントの視点」は、自分に仕事を依頼してくれた媒体や担当者が、最終的に世に出す記事に「含めてほしい要素」を満たした質問かどうかという点です。ちょっとややこしい話になりますが、例えば広告企画だったり、オウンドメディア掲載の記事だったりすると、このあたりをうまく質問項目や最終的な成果物に盛り込めていないとOKが出なかったりします。

最後の「自分視点」は、聞き手である自分自身が、事前に知識を仕入れる中で疑問に思ったり、より深く聞いてみたいと思った部分です。当然、一番思いつきやすいのですが、それが最終的な「読者」や、編集段階で目を通す「クライアント」の目線とどれくらいズレているかという点については、常に気を配っておくべきです。これらが最初から、すべて「ピタッ」と一致することもあれば、どうしてもズレてしまうこともあります。ズレていると、絶対にダメというワケではありませんが、そのあたりの「バランス」を取ることは仕事でやってればどーしても必要になってきます。バランスを調整しながら、デッキに入れるカードのうち「5枚」を決めましょう。

相手は何を「話したい」?

さて、選んだ5枚のカードのうち、「最初」の1枚は、取材のシチュエーションによって内容を変えます。そのシチュエーションとは「事前に、相手に話したいと思っているテーマがあることが分かっているとき」です。

取材やインタビューは、こちら側から希望してセッティングしてもらうもの以外に、先方が「こういうテーマについて話したい」と思って、話を持ちかけてくるケースもあります。こういう場合には、

  • 「相手」が聞いてほしいと思っていること

を、カードとして事前にデッキに加えておくことを検討しましょう。もちろん、まれにその内容が「読者」や「クライアント」や「自分」にとって、「一番聞きたいこと」と重なるケースもありますが、得てしてそうでない場合のほうが多いものです。その際には、先方が言いたいことをまず聞かせてもらった上で、後でこちら側のカードを出していくという流れを作ったほうが、全体がスムーズに進みます。

相手が「話したい」と思う内容が明確に示されていない場合でも、事前の下調べで、相手の最近の発言や、相手が所属する組織の動きなどから考えれば「今、これについて聞けば、相手はしゃべりやすいだろうな」と思われるテーマにあたりが付けられます。

取材やインタビューは、こちら側が一方的に聞くだけ、向こうが一方的に話すだけ、といった状況になってしまうと、結果的に良い成果物(これは、「読者」「クライアント」「自分」そして「相手」による総合的な評価のバランスがとれているという意味)に結びつかないものになってしまうことが多いものです。

もちろん、取材の目的によって、特にジャーナリズムの分野などでは、相手が聞かれたくないことを畳みかけるように突っ込んで聞き、結果的にスクープを取るような方法が有効になるケースもあります。ただ、実際に仕事で多くの取材やインタビューをこなしていくにあたっては、結果的に「向こうは言いたいことが言えた」「こちらは聞きたいことが聞けた」「読者は成果物を読んで、これまでに知らなかったことを知るなどの満足感を得た」(さらに「クライアントは成果物の内容と読者からの反応に満足した」)という部分で、総合的に高評価になるようなやり方が求められることが多いはずです。

「すべての関係者が満足できる」などというのは、まぁ、あくまでも理想論です。ただ、方向性として「すべての関係者に、ある程度の納得感を持ってもらえるよう、取材内容と最終的な成果物を調整するのも仕事のうち」と思っておくのは、そう悪くないポリシーだと思います。

慣れたら使おう「ワイルドカード」

さて、これでカードは「5枚」そろいました。最後の1枚は、先述したように「ワイルドカード」です。これはいわば「ブランク(空白)カード」であり、ブランクのまま現場に持ち込みます。

このカードの内容は、現場で取材をしながら決めます。つまり、相手の話を聞きながら「この部分、もっと細かく突っ込むと面白い話になりそうだ」とか「事前にまったく想定していなかったけど、話の中で面白く広がりそうなテーマを思いついた」というときに、その場で作って出します。

ワイルドカードの問題は、効果的なものを作るために、そこそこの経験がいる点と、相手との相性が良くない場合、せっかく使っても、思ったほどの効果を発揮せずに無駄に時間を食ってしまうことがあるといったことでしょうか。

なので、慣れないうちは、自分の理解度や、相手との相性、場の展開を見ながら、ワイルドカードを使うか、事前に用意したカードだけで勝負するかを考えたほうがいいかもしれません。このカードが効果的に切れるようになってくると、その場での話が思わぬ方向に展開して、互いに満足度の高い時間を過ごせたり、成果物が事前の想定よりも良いものになったりすることが多くなってきます。そうなると、こういう仕事への苦手意識が薄れて、そこそこ楽しくなってきたりもします。

カードを切る順番を「考える」

カードが用意できたら、ついでなので「カードを切る順番」についても、ある程度、事前に考えておきましょう。場数を多く踏むと、いくつかの典型的な「切り順」のパターンができてくるのですが、その中でも僕が多用するのは「時系列」と「相手先攻」です。

「時系列」はその名の通り、「過去」に関するテーマから入って「現在」「未来」へと時間の流れに沿って話を進めていくパターンです。どちらかというと、相手の人となりや、キャリア、研究の経緯などについて聞く場合に使いやすい流れです。

時系列での「ワイルドカード」は、相手が特に話したいところで使うのが効果的です。「過去」に大きな困難を克服した人は、そのときのことを臨場感たっぷりに話してくれますし、今現在がノリノリな人は、今やっていることの楽しさを話すのに時間を割きます。「将来の夢」を明確に描いている人は、それを雄弁に語ります。その話を聞きながら、さらに深く突っ込みたい、具体性を持たせたいと思ったタイミングで使うと、そこを中心に成果物の構成がイメージできることが多いです。

もうひとつの「相手先攻」は、先に「相手の言いたいこと」を話してもらうパターンです。このパターンのメリットには、割と早いタイミングで「場が暖まる」というのがあります。一般的にこちらから聞いて、それに対して相手が考えながら答えるという流れで取材を始めると、場が暖まる、つまり、自分と相手の受け答えがうまくかみ合って、スムーズに流れ始めるまでに、予想以上に時間がかかってしまうことがあります。

「相手先攻」でスタートさせると、最初は相手が準備していた言いたいことを話してもらえるので、その内容を聞きながら、その後の話の流れをコントロールしやすくなります。最初のカードでは「相手が聞いて欲しい」ことを聞き、その間にワイルドカードを作って「聞かれると相手が喜びそうなこと」を聞いた後で、3枚目以降に「相手がちょっと答えづらそうな、でもこちらとしては聞きたいと思っていること」を聞くと、結構、うまく聞けてしまったりすることがあります。もちろん、そううまくいかないことも多いのですが。

補助呪文「アイスブレイカー」

話がちょっとズレますが、「場を暖める」という意味では、カードを切る際の補助呪文として「アイスブレイカー」を使うことにもチャレンジしてみましょう。ここで言う「アイスブレイカー」は、相手の緊張を解くための「雑談」に近いものです。

相手が取材慣れしていればいいのですが、世の中には圧倒的にそうじゃない人のほうが多いわけで、そういう人を相手にレコーダーをセットして、カメラを向けながら話を聞くとなると、相手もどうしても緊張しがちになります。

何となく「相手が緊張しているなー」と感じたときには、取材に入る前や、スタートした直後に、軽く「雑談」をふってみるのです。このときに使うネタは、事前の調査で仕入れた「生年月日」「出身地」「趣味」「昨夜の晩飯」あたりの中から、選んでもいいですし、現場にある備品や相手の持ち物など、何でも構いません。

相手にもよりますが、僕はたまに「そんなに緊張されると、こっちまで緊張しますよ! カンベンしてください!」などといったド直球を投げることもあります。いずれにしても、何らかの方法で、相手が一瞬リラックスできるような状況を作ると、場が早く暖まることが多いです。慣れは必要ですが、決まると効果的ですので、頭の片隅にでも置いておきましょう。

あとは「場数」で何とかする(え?)

さて、これだけ「調べて」「考えて」おけば、あとは現場に臨むだけです。これ以上、事前に気を揉んでも、あまり意味はありません。

ところで、ここまで、5000字以上を費やしてくどくどと説明してきたことをひっくり返すようでアレなんですが、現場で取材やインタビューをスタートすると、事前にシミュレーションした筋書きどおりは進まないことがほとんどです。

相手が全然こちらが切るカードに乗ってこず、30分もしないうちに手札を使い切ってしまうこともありますし、聞いてもいないどーでもいいことばかりを延々と話し続け、カードを使い切れないまま、時間切れになってしまうこともあります。もちろん、思った以上に会話が盛り上がって、あっという間に時間が過ぎてしまうこともあります。

でも、それでいいんです。実際の所、取材やインタビューは、結果的に事前のシナリオが3割、現場でのアドリブが7割くらいになると覚悟して臨んだほうがいいと思われます。しかし、その「アドリブ」にうまく乗れるか、アドリブをベースにした1時間の対話をまとまった成果物にできるかどうかには、事前に「調べて」「考えた」量が深く関わってきます。

そして、「調べて」「考えて」臨んだ現場の場数が増え、うまくいったり、いかなかったりした経験が増えると、だんだんと自分なりの「調べ方」や「考え方」のコツがつかめてきます。デッキの組み方や、現場の取り回し方にもバリエーションが出せるようになります。それが、自分なりの仕事の個性になっていくわけです。この段階になれば、対面取材やインタビューへの苦手意識も消えていることでしょう。そうなるまで、ぜひ「調べて」「考えて」取材に臨むことを続けてください。

…といったことを書いているうちに「現場での味方と敵のパーティ構成別立ち回りパターン」とか「失敗した取材から、それらしい成果物を作るためのテンプレート集」とか、ヤバめなアイデアが浮かんできたのですが、それはまた、まとめられたら別の機会に。

あ。そういえば、明後日にインタビューの仕事1本入ってたんだった。ドウシヨウ、オナカイタイ…。

そして「Editors’&Writers’ Advent Calendar」は明日に続きます。

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